食品と元気を届ける 『酒と手づくりとうふ 十二屋』
村松唯一の食料品店、「十二屋」。店主の川上順太郎さん(74)が20代の頃に店を始めて50年、地域の台所を支え続けている。
十二屋の特徴は、何と言っても移動販売だ。順太郎さんが村松周辺と蓬平・濁沢、息子の健一郎さん(43)が山古志や栖吉方面、六日市・滝谷方面、と協力しながら、多くの地域に出向いていく。
到着を知らせるラッパを吹く順太郎さん
山古志虫亀では、今年、集落唯一の商店が廃業した。特に豪雪に見舞われる真冬は、住民にとって不自由な日々が続く。健一郎さんは、「食料品やトイレットペーパー、ティッシュペーパーとかも無くなると死活問題になる」と心配する。だからこそ、どんなに雪が降っても山古志に出向いていく。
笑顔から始まる商売
販売地域の新規開拓にも余念がない。現在、健一郎さんが行っている地域は、全て自身で開拓したものだ。
新しい地域に行く際は、一軒一軒のお宅に挨拶をして回る。怪訝な対応をされることも少なくない。それでも粘り強く通っていると、毎週買い物をしてくれるお客さんができる。すると、口コミで新たなお客さんが来てくれるようになる。徐々に地域に溶け込んでいく。
そうしてお客さんと出会っても、お客さん一人ひとりと信頼関係が築けなければ移動販売は継続できない。量販店のビジネスとは全く違う。お客さんとの世間話は日常茶飯事。前回来た時の話を掘り下げて聞いてみる。こもりがちなお年寄りには、つとめて明るく振舞って笑顔になってもらう。そうやって初めて商売が始まる。
信頼関係ができたからと言って無理な販売はしない。
「全部が全部、うめえうめえこれもおすすめこれもおすすめ、なんて言ってると『おめえ何言ってがいや』って話になる」
前回の買い物の状況などから、お客さん毎に気に入りそうな商品を提案して、買って頂く。それでも「イマイチだった」と直接言われることもある。健一郎さんは「そう言われた方が気楽」だという。常にお客さんの好みを探りながら商売を展開していくのが十二屋のやり方だ。
豆腐屋として
十二屋のもう一つの特徴は、手づくり豆腐だ。丹精込めて作る豆腐・油揚げ・厚揚げには、各地にファンがいる。順太郎さんの長年の経験を基に、その日の気温によって工程ごとにかける時間を変えながら、納得の一品に仕上げる。
健一郎さんは、以前は無かった半丁サイズのパッケージを作ったり、「おからパウダー」を商品化したりといった、新しい挑戦もしている。「(順太郎さんの)昭和の売り方と(健一郎さんの)平成の売り方で差別化」しているということだ。
健一郎さん
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「やっぱり買い物って自分で見て買うのって楽しいじゃないですか。うちで買い物すると『買い物以外も楽しくていいなあ』って思ってもらえるのが第一です」と健一郎さんは語る。山古志などの地域では、自分で車を運転できなければ買い物に行くことは難しい。そういう方々にとって十二屋の存在は、生活する上でも、心のうるおいという意味でも、とても大きいと思う。
今日も十二屋のラッパの音が地域に響く。
有限会社 十二屋
長岡市村松町2065
0258-22-1746